発展途上の王国



読者を病気で待たせられるか。

そんな気概も感じるような饒舌さで夏代くんが言った。



「ねえサナ」



熱で潤んだ瞳がわたしを見上げてねだっている。

細身の身体、
汗の匂い、
しっとりつややかな白い肌、
夏代くんの身体全部が異性を誘うフェロモンを放っているみたい。



「担当さんもそのうち原稿取りに来るから、その分も作っといて?」

「仕方がないなぁ」



思わずわたしは彼の我侭をかなえる、
約束をしてしまう。

今まで手に届かなかった彼がこうして隣にいる。

本人は知らないだろうけれど、
高校時代から恋をこじらせてきたわたしは、
夏代くん自身が弱点といえる。


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