神様修行はじめます! 其の三
「それよりも門川君達は大丈夫かな」


異形のモノ達は権田原の里以外にも現れ始めてるみたいだ。


門川に到着するまでは、彼と絹糸のふたりだけ。


ちゃんと身を守れるだろうか。


あのふたりの実力は良く知っているし、あたしごときが心配するのもおこがましいけど。


別れた時の、遠ざかっていく彼の姿を思い出す。


あたしの心は強烈な不安にさいなまれた。


門川君の身にもしも何かあったらと思うと、もう、想像するだけで耐えられない!


今すぐ彼の元へ駆けつけたい気持ちが膨れ上がる。


あぁ、門川君。門川君・・・!


「あのおふた方なら心配は無用と存じますが・・・アンソニー」


くぃっ。

アンソニーがセバスチャンさんに向かって小首を傾げる。


「二手に分かれろ。一方は永久様を追え。もう一方はこのまま潜伏しつつ護衛を」


くぃっ。

再びアンソニーの小首が傾げられた。


するとペンギン達が号令でもかけられたかのように、一斉に雪の中に潜り込んでいく。


・・・やっぱり通じてるんだ。日本語。


「さあ急いで権田原へ向かいましょう! 里が心配ですわ!」


お岩さんがスクッと立ち上がった。


でも、どうやって権田原まで移動する? 牛車は壊されちゃったし。


「雪道を走るのは、皆さんには体力的にも技術的にも大変です。ぼくなら普通に走れますけど」


そうだね。凍雨君なら得意分野だろうけど。


だからってまさか、犬ぞりみたいに凍雨君に引っ張ってってもらうわけにもいかないし。


困ったな。どうすれば・・・


「馬車は破壊されましたけれど、牛達は無事ですわ!」


「さようでございますね。牛に乗っていくのが一番効率が良いでしょう」


へ? 牛に乗る? 乗っていく?

乗馬ならぬ、乗牛?


確かに権田原牛の足の速さは高速道路を突っ走るトラック並み。


土にも泥にも積雪にも負けない、強靭な足腰をしてるけど。
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