神様修行はじめます! 其の三
「当然じゃ。人も人生も、面白くはあるが単純なものではない」


「そこに罪と償いが絡んでくれば、複雑さが増すのも当たり前だよ」


・・・・・だね。


絹糸と門川君の言葉にあたしは頷いた。


複雑だからこそ、事情を知るって事は大切な事だよ。


知るのと知らないのとでは天と地ほどの差があるもん。


「知らない方がいい」事も、世の中にはあるのかもしれない。


でも「知って」損することってあるのかな?


場合によっては余計に辛い思いをする事もあるかもしれないけど。


でもそれって「損」なこと??


知るべき事をしらないままでは、許しも救いも得られない。


その方がよっぽど損な気がする。


「なんにせよ、凍雨君と塔子殿の所業を許すことができるのは天内君だけだ」


門川君の黒髪がふわりと風に靡いている。


「許しも救いも、天内君のもの。君が救われたと言うならそれでいい」


「門川君・・・」


「そもそも僕の出る幕など、本来どこにもないんだよ」


「ふむ。そこを勘違いしてしまっては、また過ちの元になるからのぉ」


許しも救いも、あたしのもの。


傷を受けた当人だけが得ることも与えることもできる。


本来ならそれが一番真っ当な形なんだろう。


ただ、どうしても罪や悲しみは周囲に拡散していくものだから・・・。


「ん? これはなんじゃ?」


不意に絹糸が鼻をひくつかせ、怪訝そうな声を出した。


「どうかしたの?」

「いや、これは・・・この気配は・・・」


途端に絹糸の背中に緊張が走った。


しま子が静かに唸り出し、あたしを守るように肩に手を回す。

しま子? どしたの?


「天内君、気を引き締めろ」

「門川君までどうしたの?」

「異形のモノの大群だ」

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