神様修行はじめます! 其の三
「今の発言、聞き捨てならない。全て撤回してもらう。そのうえで・・・」


底冷えするほど冷たい目が、さらに冷淡になった。


「頭を下げて謝罪してもらおう。彼女に」


冷たい目。冷たい言葉。


眉ひとつ、睫毛一本動かない、人形と見まごうほどの無表情。


その異様な無表情さが、余計に恐怖を倍増させる。


これは、やばい。怒らせちゃいけないものを怒らせたって。


でもオヤジ達も黙って引き下がりはしなかった。


「な、なにを申されますか!?」


「我らに使用人の小娘に頭を下げろと仰られるか!?」


彼の冷気の威力にビビりながらも、口々にわめく。


お殿様が「町娘に土下座しろ」って言われたのと同じようなものだ。


そんな事はプライドが許さない。


「彼女への侮辱は、僕への侮辱と同等だ」


「侮辱などではございません! 天内ナオが大罪人なのは事実でございます!」


「・・・もう一度、言う。頭を下げて、彼女に謝罪してもらおう」


「なんと! 我ら上層部をないがしろにし、大罪人の血縁を重用なさるか!?」


門川君とオヤジ達の応酬の様子を伺っていた絹糸が、小さく舌打ちした。


「永久、落ち着け。よいからもう矛を収めよ」


オヤジ軍団は、ビビッて体を縮こませながらこっちを見ている。


その目も顔も卑屈に歪んでいた。


大事な大事なプライドを傷つけられ、内心は不満で一杯だ。


これ以上刺激したら、こいつらきっと必要以上に騒ぎ立てる。


そしたら上層部全体との余計な問題が生まれかねない。

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