Loneliness



【Talk:刹那】



「……刹那。」



名前を呼ばれて、あたしは目を開けた。



寝てた訳じゃない。
寝ている振りを していただけ。



眠ってしまえば、
どんなに楽だろうと思う。
けれど、眠れる訳がない。



この、行為の途中で。



あたしが顔を埋めていた胸の
持ち主である男は、
この最果ての刑務所の囚人。
行為の中で、彼が連続殺人に使った
汚い手を聞いたばかりだ。



牢屋の外から
あたしに声を掛けたのは父さん。
手招きする彼に頷いて、
寝ている男の上から起き上がった。



辺りに散らばっていた
下着や服を身に着けて、
そっと牢屋から出る。



胸に広がる いつもの感覚から
目を背けて、
あたしは父さんの背中を追い掛けた。



「吐いたか?」


「うん。」



父さんが訊いているのは、
あの男が自分の手口を
白状したかと言う事。



あたしが頷くと、
父さんは言葉を続けた。

< 52 / 170 >

この作品をシェア

pagetop