私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~
「“顔で判断しない”とか言ったクセに、やっぱり顔なのね! いくら大輔君の顔がいいからって、仮にもあなたはお兄ちゃんの彼女でしょ?」


“お兄ちゃん”!?

この人、というか“この子”は、剛史さんの妹さん?
そうかあ。剛史さんも二重人格だったんだ……


あっ、わかった。そういう事だったんだ……

剛史さんの元カノ達が彼を気持ち悪いとか言って離れて行ったのは、きっとコレのせいだったんだわ。私は自分がつい昨日まで二重人格だったから、割と抵抗なく受け入れられるけど、普通の人はこんな彼を見たら気味悪がって当然だわ……



「ねえ、何か言いなさいよ?」

「あ、ごめんなさい。ところで、あなたはどなたなの?」

「あたし? あたしは剛史お兄ちゃんの妹よ?」

やっぱりね。

「そうなんだあ。お名前は?」

「名前? えっと……」


あ、考えてる。きっと名前を聞かれた事がないんだわ。


「ヨシミよ?」

「ヨシミちゃん? つまり、岩崎ヨシミちゃんね?」

「そうよ?」


確かそんな名前の歌手がいたわよね。お姉さんも歌手で、名前は……ああ、ヒロミだ。私と同じ。字は違うけど。なるほど、考えたわね……


おっと。感心してる場合じゃないわ。ヨシミちゃんの誤解を解かなくちゃ……

< 100 / 137 >

この作品をシェア

pagetop