私の中のもう一人の“わたし” ~多重人格者の恋~

剛史Side

玉田の別人格が裕美のアパートに現れてから4日が過ぎた。

その間、俺も裕美も奴の姿は全く見ていないが、奴は会社を無断欠勤したままだし、家にも帰っていないそうだから油断は出来ない。今もどこかに潜み、裕美を襲うチャンスを虎視たんたんと狙っている。そう思うべきだと俺は思う。


「岩崎さん、お客さんと打ち合わせに行って来ますね」

「おお、悪いな。この穴埋めは後でするからさ」

「いいですよ、気にしないで。いや、やっぱり期待しちゃおうかな」

「あはは。期待していいぞ。何でも奢ってやるから」


後輩のSEが、俺の代わりに顧客の会社へ打ち合わせのために行ってくれた。俺が担当した仕事だから本来は俺が行くべきところだが、この時間から打ち合わせを始めたら、終わるのはおそらく深夜近くなっちまうだろう。

裕美をそれまで待たせるのは可哀想だし、一人で帰すのはもってのほか。という事で気心が知れた後輩に頼んだのだ。あいつなら仕事の内容をおおよそ知っているし。


頼むにあたり、裕美絡みである事は話したが、玉田の事は言っていない。普通なら色恋沙汰と取られるところだが、普段の俺は硬派で通ってるから、同僚の連中は余程の事情と察してくれているようだ。


時計を見ると、終業時刻が迫っていた。俺は会社のメールで30分過ぎぐらいに迎えに行く、と裕美に伝えた。

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