羅刹の刃《Laminas Daemoniorum》



 いまではめっきり、粗悪な種の鬼は減ってしまいましたが、鬼の内なる凶暴性は、いまも健在です。

 それは性格とかいうのもではありませんよ。

 凶悪で残虐、かつ孤高。

 そして人喰い。

 それこそが鬼の本質です。

 遺伝子としてあなたの体にある鬼の血は、いつかまた覚醒するでしょう。

そうなったときは、悪くすると、あなたは真の鬼となり、本能の赴くままに暴れる。


 ……なんですって?

人を喰うのは西洋妖怪のほうではないか?


 なにをほざいているのですか。

 陰陽師の妖退治が盛んに行われた時代があったのも、妖が実際に人に害をなした時代があったからです。

いまはたまたま、利害の一致で手を組んでいるにすぎません。

 加えて、妖全体の5分の1をばかりを占めていた“有害な妖”がほとんど絶滅してしまったから、というのもあります。

 元をたどれば、生態や起源は違えど妖も化け物にすぎないのでしょう。

 偶然、西洋妖怪に凶暴なものが多くて、日本妖怪は穏やかなものが多かった。

それだけの話です。

 鬼だって人は喰いますよ。

 いや、平安京の時代に遡れば、彼らの主食は人だったのだから、生き残りである彼らにしてみれば、いまさらの話です。







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