エクスタシー 2 〜極貧のオンナ?〜
23.ミジンコとダイヤモンド @美穂
NAS506便は定刻通り、成田へ到着した。

大したトラブルもなかったのに、精神的に疲れた。

早く帰って半身浴したい……。

おや?

税関を抜けたところに不吉な人影…。

―――うわっ……。

藤山が待っている。

が、藤山は私にではなく、可奈子に声を掛けた。

「沢井さん。あとで一緒にお食事しましょう。OJTの感想、聞かせてちょうだい」

派閥のトップ、専務に報告するためなのだろうか。

あたしは藤山との係わり合いを避けるために、早足にそこから退散しようとした。

それなのに、いきなり可奈子が呼び止める。

「あ。関谷先輩! 帰っちゃうんですか? 私、色々と相談したいことがあったんですけど……」

―――よ、余計なことを……。

「そうね。良かったら美穂さんも一緒にお寿司でもどう?」

―――み、美穂さん?

笑顔の藤山は既に姑モード。

―――銀座の寿司屋は魅力的だけど……。

「す、すみません。私、このあと用事があって」

引きつりながら、そう答えた。
< 201 / 280 >

この作品をシェア

pagetop