チョコよりも甘く
♪~♪~♪



部屋に鳴り響く携帯の音。
サブディスプレイを覗くと紗姫ではなく、≪翔≫と記されていた。






ピ――――




一瞬躊躇ったが、勇気を振り絞って出た。








「もしもし…」


(ごめん、葵。俺…本当に悪かった)




電話越しに聞こえる、低くかすれた翔の声…
まさかこうして電話をしてくれるとは思わず、あたしは涙をこぼした。





「翔…」

(南城に言われちった。俺って情けないよな…、大切な女を大事にできないなんて)





あたしはベッドから起き上がり、姿勢を戻した。




目の前には壁に貼られたたくさんの写真…





中2の時、翔と付き合い始めたもの。
初めて喧嘩したときのもの。






頭の裏に、翔との思い出がたくさん蘇ってきた。






(俺にとって、葵が一番大切なんだ。…もう一度、お前と真剣に向き合いたい。父親としても…)






翔は泣いているのだろう、鼻を啜る音が聞こえた。





「会いたいよ…あたし、翔に会いたい!」






あたしは部屋を飛び出し、玄関に向かった。





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