嘘の誓いとLOVE RING


「え?仕事を降りるって、どういう事?」

圭祐は、申し訳なさそうに私に目を向けた。

「兄貴の強い希望なんだ。親父も了承したから。それにしても美亜、離婚届を突き付けたんだって?さすがに、驚いたよ」

ため息混じりに圭祐はデスクへ着くと、パソコンを開いた。

「まさか、離婚が原因なの?」

だから、仕事まで奪われるというのか。

確かに最初は、凌祐の側にいた方が、凌祐をよく分かるからという理由でこの仕事をさせられた。

元々のきっかけが不純なのだから、離婚が原因で辞めさせられても仕方がない。

だけど、ようやく慣れてきた仕事だっただけに、ショックは大きかった。

それに、仕事のお陰で圭祐の人柄も分かったのだから。

「まあ、そんなとこかな。ごめんな。俺には、引き止めるだけの力が無かったんだよ」

「ううん…。圭祐が謝る事じゃない。だけど、佐倉さんは、秘書のままよね?」

「ああ、もちろん」

“もちろん”?

離婚のきっかけは、佐倉さんとの関係だというのに、そっちはお咎め無しというわけか。

「兄貴の意思が固くてさ。本当にごめん。月末で美亜には辞めてもらう」

その宣告に、腹立たしさしか残らなかった。

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