嘘の誓いとLOVE RING


今度こそ、副社長室を出た私たちは、エレベーターに乗り込んだ。

時間が遅いせいか、他には誰も乗ってこない。

そんなほんの数秒の二人きりの時間で、圭祐は私に尋ねたのだった。

「なあ、美亜。何で、そこまでして知りたいんだ?仮に、佐倉さんが兄貴を好きだとしたら、どうするつもりなんだよ?」

「分からない。自分でも、よく分からないの。ただ…」

「ただ?」

私を見下ろす圭祐に、左手を上げて見せた。

「この指輪のせいで、凌祐と結婚したんだって思い知らされるのよ。そしたら、何て言うか…。そう、妻のプライドってやつね。そんな気持ちが沸いてくるんだ」

形だけの結婚にすぎないのに、だからこそ形として見えるものに縛られている気がする。

「理解不能だな」

呆れる様に言った圭祐に、口を尖らせてみせた。

「私だって、分からないもの」

もし、本当に佐倉さんが凌祐を好きだったらどうするつもりなのか。

それは、まだ分からない。

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