嘘の誓いとLOVE RING


どうしてここで、圭祐の名前が出てくるのだろう。

今は、凌祐の顔を見るのも複雑だから、出来るだけ二人の時間を作らない様にしようと思っただけだった。

家に帰れば、どうしても二人きりになるのだから。

そう思って拒んでいるだけなのに、圭祐の名前が出てきては、こちらとしても答えようがない。

すると、見るに見かねたの様に、圭祐がフォローを入れてくれたのだった。

「美亜、兄貴と帰れよ。せっかく来てくれたんだからさ」

「え?あ、うん…」

仕方ない。

これ以上拒んでも、凌祐はますます意固地になりそうだ。

本当、時々子供じみた真似をするのだから、困ってしまう。

ため息をつき、凌祐を見上げた。

「一緒に帰ろ」

そんな私を見ながら圭祐はニヤリと笑うと、小さく手を振っている。

一体、何が面白いというのだろう。

ぎこちない空気のまま、副社長室を後にする。

そして、並んで歩きながら、凌祐に自然と聞いていた。

「佐倉さんは…?」

「唯香?帰ったけど、何か用だったのか?」

「ううん、何でもない」

佐倉さんがいたら、今夜はこんな風に誘われなかったのだろうか?

いや、前回誘われた時は、佐倉さんが一緒だった。

だから、きっと関係ない。

そんな事を、頭の中で思い巡らせていたのだった。

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