青い猫の花嫁


「驚かれましたか?」

「え?」


顔を上げると、縁台に並んで座る正宗さんが、真っ直ぐにこちらを見下ろしていた。


「あの……はい」


その視線が真っ直ぐ過ぎて、思わず俯いてしまう。

お茶を手にした正宗さんは、それを一口飲みそれから小さくため息を零した。



「花見せ、またお花見と言われるこの儀式も、三國に古来から伝わる物です」


花見せ……。
みんなの体に刻まれていた、あの桜の花びらの痕、の事かな。


「十二人の体に刻まれたあの痕こそ、三國の一族の証。そして、物の怪憑きの証」

「物の怪憑き……。じゃあ爽子や松田君もトワみたいに変身しちゃうんですか?」


あたしの言葉に、正宗さんはフルフルと首を振った。


「いいえ。変身してしまう事はありません。その為の花見せですからね」

「でも、トワは雨に濡れたら猫に……」

「それは、猫憑きが他の者とは違うからです。その証拠に、彼の髪や瞳が青い。それが猫憑きだという紛れもない事実」



え?

青いのが……猫憑き?



さっき、親戚の男の人達に『青いの』と言われていたことを思い出す。
それから、ナギさんの『トワは特別』って事も……。

それはトワが猫憑きってことを言ってたのか……。


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