青い猫の花嫁

しばらくの沈黙の後、トワがその頬をすり寄せた気配がした。


と、その時。


ポンっ!


真っ白な煙の中から、淡い空色の髪がふわりと現れた。

よかった、無事に元に戻っ……。


「って、ひゃああ!ふ、服っ服……」


いきなり視界を覆った素肌に、ガバッと顔を逸らした。
そんなあたしとは正反対の、爽子と松田君。
なぜかニコニコして、あたしの手に、トワの衣類をトンと押し付けた。


「真子ちゃん、藍原君の服」

えっ、あたしに渡されても……

「ほらほら、早く着ちゃえよ」


トン!


「わっ!」

松田君に背中を押されたあたしは、バランスを崩したまま、なんとか壁に手をついた。

あ、あぶな……。
裸のトワにぶつかっちゃうところだった……。


ふぅ。
なんて安堵のため息を零したあたしの頭上から、声が降ってきた。


「………、真子、服着れない」

「へ?」


キョトンと顔を上げた。
そこには、困ったように目を細めたトワが、あたしの事をジッと見下ろしていて。

なんだか顔、赤い?



「…………」


……はっ!
ひええっ
あ、あ、あたし、なんてことをっ。
トワを囲うようについていた手を、慌てて引っ込める。

「ご、ごめん!」

くるりとトワに背を向けると、少し離れた場所にいたふたりに駆け寄った。


「真子ちゃん、大胆」
「あのねぇ……」


含み笑いの爽子を思わず睨む。


あーもう。
びっくりした……。

間近で見たトワが、あんな顔するから……心臓、止まるかと思ったよ。


いつまでも鳴り止みそうにない胸の鼓動。

少しでも落ち着けたくて
そっと手を当てて、ギュッと目を閉じた。


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