青い猫の花嫁

「あの子はね~。ちょっと変わった子でね~」

「はい……」


頷いていいものなのか。

薄く綺麗に切られていくお肉をぼんやりと眺めてしまう。


「ああ、バーベキューよりも鍋にしよう。ここの夜は冷えるからね。真子ちゃん、お野菜切ってくれる?」


おじいさんの指差した先を見ると、籠の中に色んな野菜があって、どれも土付きの新鮮なものばかりだった。

あたしはそこから適当に野菜を手に取ると、水で泥を落とす。


「誰もいないこんな辺鄙(へんぴ)な場所でワシを1人にしておけないってね。本当は優しい子なんだけど、人との関わりあんまり知らないと言うかねぇ」

「それは……トワが猫憑きって事が理由ですか?」



冷たい水が、スルスルと手の甲を滑る。
研ぎ澄まされた指先が、ヒリヒリと痛くなるほどだ。

おじいさんは穏やかに微笑んで、切ったお肉をお皿に並べていく。


「この家に猫憑きが産まれたのは、本当に何十年ぶりだったんだよ」

「……」

「両親は酷く悲しんでね。それはそれは見るに堪えられなかった。だから見捨てたんだよ。トワを」


え?



ゴロゴロ……流し台に、玉ねぎが転がって行く。


みすて、た……?



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