青い猫の花嫁

目を見開いたトワ。
正宗さんはその石をこちらへと手を差し出した。
しばらく正宗さんの真意を探るように、眺めていたトワが諦めたように小さくため息を零した。

石を彼の手に乗せる。
それは正宗さんの手のひらの上で、踊るように転がった。


正宗さんが、懐から何かを取り出した。
見ると、それは真っ白な紙切れのようで、正宗さんは丁寧に蒼い石をし包んだ。


そして、目を閉じる。


「我に使える式神よ……中央五方五千乙護法、唯今行じ奉る」



口の中でそう念じ薄く瞼を持ち上げると、手のひらにフーッと息を吹きかけた。


その瞬間……


霧のような煙が現れて、それは正宗さんの目の前にユラユラ揺れた。

みるみるうちに、形を変える煙を固唾を呑んで見守った。



「カラリンチョウカラリンソワカ、急急如律令」


そして正宗さんが何かを指先で描くと、その霧状のものは急に実体化して、ストンと畳の上に降り立った。



あ……



「猫!」



そう、それはあたしをこの三國家に導いた、あの黒猫。
猫を従えた正宗さんは薄く微笑んで、それから真っ直ぐにあたしとトワを見ながら言った。



「僕の本当のお役目を果たす時が来たようですね」



本当の……お役目?

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