青い猫の花嫁

トワが、変身しちゃう時によく似ていたから。

煙が引いて、人間になった動物たちが忙しなく何かの準備を始めた。

茫然とそれを眺めていると、目の前を通り過ぎた人物に驚いた。


「……さ、爽子!」


それだけじゃない。
松田くん、カナトくん、郁くんも……みんなだ。

服装とか、今と違うけど、顔はうりふたつ。


叫んだあたしの声は、みんなには届いていない。
そこどころか、存在すら忘れ去られたみたいに、目も合わなくなってしまった。


「どうなってるの……」



呟いたあたしの手がいきなりクイッと引き寄せられた。

ハッとして見上げると、すぐそばでトワが眉間にシワを寄せた所だった。


「……トワ?」


どうしたの、って言おうとして彼の視線の先に気が付いた。


あ……。



「……正宗さん!」


あたし達のすぐ隣。
いつの間にか真っ白な式服に身を包んだ正宗さんが、穏やかな笑みを浮かべてそこに立っていた。


そして、驚いているあたしに、彼は人差し指を唇に当てて見せた。


「……」

『準備をしているんですよ』

「え?」


その声は、頭の中に直接聞こえてくるような、そんなくぐもった声。


「ま、正宗さん……これはどういう事なんですか?ここは一体……」




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