等心大〜tou・sin・dai〜

突然の。

早めに仕事を切りあげ
友貴のマンションへ向かう。



途中スーパーに寄った。


友貴の好きなメーカーの
ポン酢が目に入ったので
しゃぶしゃぶにしよう、と即決。




カゴに
長ネギ、水菜、だし昆布…
と入れて行く。



――なんか、主婦みたい。

そう思って、
ちょっと笑った。





肉は奮発して
肉屋で高いのを買った。




「奥さん、
 うちの肉はうまいから
 500gなんてすぐ食べちゃうよ」

肉屋のオジサンが
私に言った。




――奥さんだって。

なんだか
うれしくなってしまい
800gも買ってしまった。






友貴の部屋につくと
冷蔵庫に肉を入れ
まず掃除機をかける。



なんだか
新妻っぽい?

真希の手紙を読んでから
変に意識してしまう。



そのあと
しゃぶしゃぶの
野菜を切っていると
友貴が帰ってきた。



「オッ!めずらしー
 今日ここで食うの?」

「イヤだった?」

「うぅん、
 外出るのメンドーだったから
 うれしい」



友貴がニカッと笑って
ネクタイを外した。





私は男の人が
スーツを脱ぐところを
見るのが好き。

なんだか無防備で
許されてる、って
感じがする。



スエットに着替える友貴を
横目で見ながら
テーブルにしゃぶしゃぶの用意をする。



「なんかね、
 私の同級生が結婚したんだって」

「ふーん」


「そんでね、
 妊娠もしてるんだって」

「まぁ子供ができても
 おかしくない年齢だもんな」





聞きたいのは
そういうことじゃないのに。








「俺は男がいいな」



少しの沈黙のあと
友貴が言った。



「釣りとか連れ回してさ、
いいよなぁ〜」




――意外。

友貴って
子供好きだったんだ。



「もう肉入れていい?」

「あっ、うん」



2年付き合って
こんな話はじめてしたかも。
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