等心大〜tou・sin・dai〜
ジャッジ
「あぁぁぁ…食べすぎたぁ」


たくさん食べて
たくさん呑んで
たくさん笑って
私達は家路についた。


「俺も苦しい〜」

部屋に入るなり
友貴はお腹が苦しいのか
スエットに着替え始める。



「泊まっていこうかな」

帰りたくなくて独り言のように
でも友貴に聞こえるように
言ってみた。



「いいけど…家に連絡しとけよ」

「…いつもそんなこと言わないくせに」

「いや、挨拶いったあとだからさ」

「大丈夫よ。
 友貴のこと気に入ったみたいだから」

「そっかぁ…よかった〜」


気に入ってもらえたことが
ものすごく嬉しかったらしく
顔をクシャッとさせて
友貴は笑った。




この人を
幸せにしてあげたい。

この人と
幸せになりたい。


どうにもならない気持ちが
溢れ出してきて
私は友貴に抱きついた。



「甘えん坊だなぁ」

ぎゅっと私を抱きしめる友貴の腕。

友貴のにおい。

胸がしめつけられる。
泣きたくなる。



「…私ってイヤな奴だね」
「なんでだよ。
 そんなことない」

「ううん。そうなんだよ」

「…今日の彩は少しヘンだな」



そっとキスをして
シャワーも浴びずに
そのままベッドに倒れこんだ。

まるで
初めて結ばれたときのように
お互いを強く求めた。




どんなに求めても
ひとつには、なれないのに。



人は錯覚したいのかもしれない。
大好きな人と
ひとつになれた、と。
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