人間クローバー
「こっちおいでよ?」

少女は落ちついた様子で言う。



竜也は黙ってフェンスをよじ登った。

それから少女は、何事も無かったかの様にまた鼻唄を歌いだした。


竜也はフェンスの反対側まで来ると、落ちない様にフェンスをしっかり掴み、少女の方にゆっくりと進んだ。


一メートル位しかない細いコンクリートの上を竜也は恥ずかしそうにカニ歩きで進む。


竜也は少女の方から人が二人分位であろう距離の場所に座った。


「もっとこっちにおいでよ?」


あどけなさの漂う笑顔が竜也の心拍数に拍車をかける。

「お、おう…うん」


まるで分かりやすい竜也の露骨過ぎる口調。


「は、はじめまして」


「……はじめまして」


お互い、ぎこちない様子で挨拶をすると暫く沈黙が続いた。
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