DECIMATION~選別の贄~

その頃、会社の屋上では佐竹が同僚の中山と国塚とランチを過ごしていた。

「由奈また櫛田さんに怒鳴られたんだって?たかしくんが教えてくれたよ」

「えー、またぁ?ほんとに櫛田あいつキモいよね。

まじ死んで欲しいな」

櫛田はその横暴な態度で他の部署でも知られている。

それだけに佐竹の同僚とあれば知らぬはずがなかった。

恐らく身近にそんな処遇にある人がいれば皆真摯になって気持ちを受け止めてあげたり、相手を罵倒することだろう。

その当事者ともなれば、中には会社に行くことすら拒みたくなる人だっているかもしれない。

しかし、この当事者である佐竹は違っていた。

「ううん、私が悪いんだよ。仕事中の先輩の資料にコーヒーカップを置くなんてどうかしてた。

もしかしたら当たってないかもしれないけど、相手が当たってたって感じたのならそれは当たってたんだもん」

「う……まぁ、そうかもだけど」

佐竹は食べ終えた小さな弁当箱を綺麗にしまう。

そして二人に笑顔を向けて言うのだった。

「それに、外見はあんなで勘違いされやすいのかもしれないけど、中身をよく知っていけば綺麗なもの持ってるのかもしれないじゃない?」

中山と国塚は顔を見合わせて、同じタイミングで首をかしげて笑った。

「ほんと由奈って人良すぎ」

「ほんとだよー。あんなやつのことそういう風に見てあげられるのなんて世界でも由奈くらいなんじゃない?」

「ええーなにそれ?

あはは」

それからはガールズトークがしばし繰り広げられ、最終的にはまた櫛田の罵倒大会になって昼休憩は終わった。

その中で佐竹が櫛田の悪口を言ったり、二人の言葉に同意することは一度もなかった。



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