DECIMATION~選別の贄~

切り取られた内臓がケースに納められていく。

「初めてね。あなたがターゲットを傷付けたの」

ベロニカは切り裂かれた喉と腕の傷口を見ながらそう言った。

佐竹は全ての作業を終えると床にへたりこんだ。

瞳からは完全に生気が抜け、座るために身体を支えている以外ののあらゆる筋肉が弛緩しているようにも見えた。

「お疲れさまね由奈。

これであなたは自由の身よ。全ての苦痛から開放してあげるわ」

マークが背後に迫り、佐竹はわずかに首をひねった。

黒い手が細くなった鮮血に染まる腕を持ち上げる。

「なにしてるの?」

自分の手にあてがわれた物を見て、少しだけ瞳に生気が戻る。

「何って、だから言ったでしょう。

全てから開放してあげるって」

マークが手にしていたのは透明な液体の入った注射器であった。

腕を振り払おうとするが屈強な男の腕から逃れる術はなかった。

ゆっくりと注射針が着ていた服を通り抜け、肌を貫いていく。

「やめて、いや」

佐竹は首をしきりに横に振った。

視界の真ん中で自分の腕にどんどん注射針が侵入していくのがみえる。

得体の知れない液体がゆっくり、ゆっくりと体内に流し込まれていく。

「いやぁあ!やめてよ、やめてよねぇ!私頑張ったでしょ!

あなたたちの為に、なのになんでぶつの?ねぇ、ママ止めて由奈嫌だよぉ」

錯乱した佐竹は幼い頃に受けていた虐待の体験を思い出して泣いている。

液体はすぐに全て流し込まれ、マークはゆっくりと手を離した。

「いやだ、やめて、やめてよ。

ママ、ママ、ママ。私なにもしてねぇべや、いったい何したっていうんだよぉ」

頭を抱えて叫ぶ。

いや手をあげる母親に話しかけていたのだろうか。

その後すぐに彼女の心臓は動かなくなり、心配停止状態に至った。

「……そういえば、まだあなたの質問に答えてなかったわね由奈」

血に染まり、隣に腹を開かれた無惨な男の死体があるというのにベロニカは平気な顔で手術台に腰かけていた。

マークは佐竹を抱えあげてもう一つのシーツにくるまれた手術台に運んでいく。

シーツをはがしたそこには、器具が全て揃ったちゃんとした手術設備が整っていた。

「これはね、あなたの為の手術台。

あなたは我々の隠蔽工作に助力してくれた、お礼にただ殺すだけでなく、新たな人生をあげる」

急に扉が開き、手術着に身を包んだ人が次々に入ってきた。

すぐに、人工心肺と呼吸器が取り付けられて手術は始まった。

「あなたの臓器、角膜、骨髄、全て余すところなく新たな命の為に使ってあげる。

私たちはあなたみたいに、ただ人を殺して内臓を使えなくして眺めるだけの馬鹿とは違うのよ」

ベロニカは手術台から降りると血で汚れたスーツのスカートをおもむろに脱ぎ捨てた。

表面積の狭い真っ黒なショーツから真っ白な足が伸びている。

ベロニカが手を出すと、マークはすかさず新しいスカートを手渡した。

「私たちは快楽に身を委ねたりはしない。だって、これはビジネスだもの。

これがプロってやつよ。分かったかしら?……えっと、誰だったかしらね」

手術は二時間ほどで終わり、佐竹の身体はチーズのように穴だらけになり、証拠隠滅の為に後日身体はバラバラに、分解されて処理された。








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