DECIMATION~選別の贄~

『ピピピピピピッ』

深夜に部屋に響き渡る呼び出し音。

携帯の持ち主は心地よい眠りから引き戻されて、不機嫌そうに乱暴にその音の在りかを探した。

それを手に取り、液晶に移った相手の名前を見て最悪だった気持ちが180度の激変をする。

「もしもしっ」

色気ある声色は相手への好意が見てとれるようである。

「前回の仕事はご苦労だったな。お前の働きぶりには期待している」

思いがけない言葉に気持ちは更に高揚していく。

「あぁ、ボスにそんなことを言っていただけるなんて。

私、嬉しすぎてイってしまいそうですわ」

女の言葉にも電話相手の感情には微塵の変化も見られない。

「次の仕事はお前に任せたい。重要な『initial』の件だ」

その単語を聞いた瞬間に女の顔は仕事の顔へと変わった。

「『initial』の件を私が…………?」

「恐いか?」

女の反応に、そう笑って応じた。

「いえ、光栄ですわボス。

このカスミの誇りにかけて必ずやボスの期待に応えますわ」

「あぁ、期待しているよ」

カスミは携帯を置くと、布団を投げ出して窓辺に立った。

豊満なバストを露にしながら、高層ビルから遠くの街並みを見下ろした。

鏡のように磨かれた窓に映るその表情は悪魔の様に冷酷な瞳であった。








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