ロリポップ
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「逢沢さん!」
久しぶりに聞く声に、自動販売機に500円玉を入れようとしていた手を止めて、声のほうへと振り向く。
そこには、腕時計を返してもらってから会わなかった恩田君。
外回りからの帰りなのか、黒いコートにモスグリーンのマフラー姿の恩田君が、相変わらずサラサラの栗色の髪の毛を揺らしながら、まっすぐに私のほうへと歩いてきていた。
その肩や頭にはうっすら白いモノが乗っていて、彼のコートも少し濡れているようだった。
「恩田君、外、雪が降ってるの?」
「え?あ、さっき降り始めたんです。積もりそうな雪じゃないので、帰る頃には止むと思いますよ」
恩田君が側に来たら彼から冷気が伝わって、外は思っているよりも寒いのかもしれないな、と思った。
彼の指先が、寒さのせいか赤くなっている。
入れようとしていた500円を自動販売機に投入して、ボタンを押した。
カタン!と紙コップの落ちた音がして茶色の液体が湯気を上げながらその紙コップを満たしていく。
ピッ!の音を合図に熱々の紙コップを恩田君に差し出した。
「え!?」
「外、寒かったでしょ?」
「逢沢さんの分なんじゃ・・・」
申し訳なさそうな顔をする恩田君に
「私はカフェオレ派だから。恩田君も知ってるでしょ?」
そう言って再びボタンを押す。
「だから、これは恩田君の分。自動販売機ので申し訳ないけど」
差し出す紙コップを両手で受け取る恩田君の顔は、何だか難しい顔をしている。
コーヒー、飲みたくなかったとか?
断るに断れない・・・とか?
「・・・ありがとうがございます。手袋してなくて指先とか感覚無くて・・・。嬉しすぎて・・・・・」
なんか凄く感激されてる?
にっこり微笑む恩田君につられて、私も笑ってしまう。
和むわ~、恩田君。