ロリポップ
「そんなに好きだったの?」

 
 場所を会社前の公園に移動して、ベンチに腰掛けて友華は不思議そうにそう言った。


「好きだったよ・・・。休みにはデートして、一緒にご飯食べたり映画見たりして。週末は一緒に過ごして・・・沢山の時間を過ごしてきたんだもん」


 思い出すのは楽しかった事ばかり。
 初めてのデートの事や、初めて手をつないだ事、初めて文哉にご飯を作ってあげた事・・・思い出の中の私はいつも笑っていた。文哉の隣で、幸せそうに笑っていた。


「私には最近の音羽は習慣になってるから、一緒にいるように見えたけど。好きって事よりも一緒にいないといけないみたいな。一人で週末を過ごすのが怖いような・・・さ。違う?」


 違う・・・とは言い切れないのは事実だった。
 いつも週末を文哉と過ごしてきた私は、一人でどうやって時間を過ごしていいのか忘れていた。
 文哉と付き合うまでは一人で過ごす週末が寂しいとか、どうやって時間を過ごそうなんて考えなかったのに。

 
「好きだったってのも本当だと思うよ。音羽は見た目よりもずっと純粋だからさ。見た目は峰不二子みたいでも」


 友華がニヤリと口角を上げて笑う。


「それ言われるの、本当、嫌なんだけど」


 私の文句など気にもしない感じにケラケラ笑う友華につられて、私も笑ってしまう。
 そんな自分にちょっと驚く。
 意外と大丈夫。
 だって、ちゃんと笑ってる。
 







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『今日の6時にいつもの居酒屋で待つ』

 果たし状が再び届いたのはその日の夕方。
 残業もなく仕事も終わりそう、とか思いながらパソコンに向かっていた時だった。ポケットの中のスマホがブルブルッと震えて、メールの受信を伝える。こっそりと受信箱を開くと、いつもの果たし状が届いていた。

 だから、果たし状かって!!!とメールに突っ込みながら、素早くスマホをポケットにしまう。
 残り少なくなった就業時間内にこれを終らせなくては。

 果たし状の待ち合わせ場所に間に合うように。

 キーボードを打つ手に集中して、手早く仕事を終え私は席を立った。
 












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