誕生日は残業
「…古見井さ、俺のこと係長って言いづらいだろ。」
また前を向き、歩き始めたかと思うとそう、日野さんは口にした。
あ、やっぱり気づかれてた。
同僚として働いていたときは【日野さん】と呼んでいたから。
直さなきゃと思ってはいるものの、まだスムーズに【日野係長】とは出てこない。
「すいません、早く慣れますので。」
…そう、日野さんは【日野係長】で、上司で。
この優しさも、部下を思う優しさ。
そんなこと、わかっているのに。
高鳴る心臓はおさまらない。