アニキのトモダチは王子様
そして。

「アニキ、友達って……」

ちょっと遅れてアニキと一緒に入ってきた人を見て。
私は、息をのんだ。

「あ、こいつなんだけどさ」
「女の子じゃなかったのっ!?っていうか、桐高の王子様……!」
「へ?」

アニキ、きょとんとしてる。
まさか、本気で知らないんだ。

アニキの通っている桐川高校は、イケメンが多いことでうちの女子高でもちょっと有名だった。
その中でも、イケメン御三家のひとりが、今目の前にいる、通称「桐高の王子様」。

アニキの隣にいる王子様が、私に、笑いかける。

「はじめまして。瑠海さん。マコトから話はよく聞いてるよ」
「ええっ!っていうか、いったいなんで……」

なんだか、私はアニキが女の子を紹介してくるのだと思い込んでいた。
人間不信で、人とのかかわりが苦手そうな女の子と、私に友達になってくれってことだと思ってた。

なのにまさか。

「なんだよるぅ。井坂のこと、知ってんのか?」
「あたりまえじゃない。井坂圭一さん。うちの学校で知らない人なんていないんだから」
「へぇー」

あんまり興味もなさそうに、アニキが言う。

「なんだよ、おまえも井坂のファンなのか?」
「え?」

べつに、ファンっていうわけじゃ、ないけど。
そもそも、話したこともないし。
どんな人なのかも知らないし。
でも、目の前でそんなこと言うのも、悪いのかな。

「ファンとかじゃないけど。あ、でも嫌いってわけじゃなくって、お話したこともないのに、どんな人かなんてわからないし」


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