シークレット・ガーデン


ステップワゴンは藤沢駅のロータリーへと入った。


司は素早く車を降りて、真彩が後部座席から降りるのを、ドアの外で待つ。


「気を付けて」


ママバッグを持ってくれた。


「うん。ありがとう。司。
渚ちゃんとも逢えたし、すっごく楽しかった!」


前抱っこした理亜の背中をさすってやりながら、真彩は司の顔を見上げてにっこりとする。



ーーこれきり、もう二度と逢うことはないかもしれない……



そう思いながら。



車の中から渚は、盛んに何か言いながら、手を振っていた。


窓が締まっていて、声は聞こえないが、真彩はそれに応えて手を振る。



「…あのね」


真彩は司に向き合った。


「実は私、秋に旦那について札幌に引っ越すの。転勤の内示が出ちゃって」


「……えっ、マジ?」


ジーンズの両ポケットに指を掛けた格好で司は目を丸くした。



「札幌かあ。すげえ北と南だね。
寒いんだろうな」


「…もうひとつ言うとね…

旦那との喧嘩の原因は、エッチしてる時、間違えて司の名前を呼んじゃったからなんだ…

それなのに謝りもしない私。
ひどい妻でしょ?」








< 161 / 216 >

この作品をシェア

pagetop