シークレット・ガーデン


「覚えてる?私達も昔、ディズニーランド行ったの」




口の中に柿ピーを放り込んで、真彩が訊くと司は、


「……?」



天井を見上げ、とぼけた風に首を傾げた。
二重まぶたの長い睫毛が上向きになる。



「やだっ!嘘でしょ?覚えてないの?
電車に乗って行ったじゃない!
一緒にスプラッシュ・マウンテン乗ったじゃん。
レストランに入るのに、1時間も並んだじゃない〜
それでも、私は楽しかったのに…もおっ!」


真彩は頬を膨らませ、拳を振り上げてみせた。

全然届かない距離なのに、司は身体を捻り、避ける真似をした。

笑いながら言う。


「なんてね……覚えているよ。
俺、真彩にイルカの縫いぐるみ、買ってやっただろ?」


「え?」


司は、記憶違いをしている。


(イルカのそれは付き合い初めの頃、
横浜八景島に行った時だってば……)


真彩は思ったけれど、
「そうだったね」と答えた。





「もう…だいたい乾いたかな?」


司がドライヤーを止めると、一気に静寂が訪れた。


テーブルの上には、司が前の日に買い置きしておいた柿の種が広げてある。




……さっきから、予感がしていた。


司が何かを胸に秘めている気がした。



真彩は、ビールを一口飲んだ。




「…あのさ、真彩はどう思うかな?」




ビール片手に、伏し目がちに司が言い出した。










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