シークレット・ガーデン


光俊は、リビングと和室を仕切る襖をそっと開けた。


「ただいまあ、理亜。やっぱ寝ちゃったかあ……」


ふう、溜め息を吐く。


真っ暗な部屋で、カエル柄の夏掛けに包まった理亜が、安らかな寝顔を見せていた。


3歳になった理亜は、ぷくぷく頬っぺたと広くて丸いおでこが愛らしい。

最近は、よくパパ似だと言われる。


「うん……もう少し早く仕事が終わればいいのにね。このところ、毎日10時過ぎちゃうもんね」


正方形の食卓テーブルに、冷蔵庫から出したおかずを並べながら、真彩は答えた。


「早く帰りたいんだけどなあ、皆残ってるんだよ……
しかし、こっちは蒸し暑いなあ……

お、うまそう。海老フライに肉豆腐か」


暑がりの光俊は、白いランニングシャツに、短パン姿で嬉しそうにうちわでパタパタと自分を仰いだ。


うちわの風で、カトレアの白い花びらがわずかに揺れた気がした。



「あ、そうだ。
今日からお前、排卵日じゃね?
風呂はいってこいよ。理亜寝てるし、
ビックチャンス到来」


あまりのストレートな発言に、なぜか真彩は赤くなってしまった。




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