シークレット・ガーデン


「フォアグラなんて食べたの、何年ぶりかなあ!
デザートのムースショコラと洋梨のソルベもすっごい美味しかったあ!」


すっかりご機嫌の真彩は、両手の指先を伸ばして、くるりと身体ごと廻ってみせる。

すると、光俊がすっと右手を伸ばし、真彩の左手を捉えた。


二人は微笑み合い、そのまま手を繋いで、駅の向こう側にあるコインパーキングに向かう。



藤沢は真彩の育った街だ。


光俊と結婚する30歳まで、湘南の玄関口であるこの街で過ごした。


母親と買い物に来るのも、藤沢駅に隣接するデパートだったし、中三の時、同級生の少し不良っぽい男の子に誘われて、初めてデートしたのも藤沢のファッションビルだった。


高校・大学は駅前のロータリーから、バスに乗って通った。


真彩の出身校は私立の女子大附属校で、県内では、お嬢様学校として名が知られていた。


真彩は、いわゆる中流家庭で育ち、住んでいた二階建ての家だって古かったし、広くもなかった。


真彩自身は、お嬢様でもなんでもないのに、そんな学校を選んだのは、母親が強く希望したからだ。




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