シークレット・ガーデン


この駅は、光俊の降りる駅ではなかった。

電車の中で、真彩が傘を手すりに掛けたまま降りてしまったのを偶然見ていた彼は、慌てて真彩の傘を持ち、後を追ってきてくれた。


「うわ〜!嬉しい!
すごくお気に入りの傘なんです!
ありがとうございますぅ!」


諦めていた傘が、思いがけず手元に戻り、真彩は子供のように飛び跳ねて喜んでしまった。



『もうっ…ど真ん中、ストライク。
この子、可愛すぎる!結婚したい!って思った!』


付き合い始めてすぐ、光俊は出逢った時の感想をそんな風にいった。



実は真彩も出逢った時から、恋の予感を感じていた。


人の忘れた傘なんて気が付いても、知らん顔するのが普通なのに。


この人はわざわざ自分の降りる駅でもないのに、傘を届けてくれた……


はい、どうぞ、と真彩に傘を差し出す光俊の目が優しくて、
(自分はきっとこの人を好きになるだろう…)と直感していた。


(このエピソードは、真彩と光俊の結婚披露宴で、友人代表のスピーチにも使われた。)


付き合い始めて一ヶ月後、光俊は改まってものすごくストレートに

『ずっと一緒にいたい。結婚しよう』

とプロポーズをしてくれた。



光俊がエンゲージリングに小粒のダイヤが並んだエタニティーリングを選んで、真彩に贈ってくれた時には、あまりにも感動して泣いてしまった。




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