beautiful love ★ 俺様boyと天然girl
【早手Side】
その日の放課後。
いつも通り練習をこなして、休憩に入った俺たちはコートの端に座り込んでいた。
タオルで汗を拭きながら水を飲む。
ふと視線を向けると、コートの向こうではマネージャーの三人が忙しそうに動き回っていた。
優希がノートを確認して、その横で水乃がボトルを並べてる。
藍川先輩は顧問と何か話したあと、すぐに二人のところへ戻っていった。
「マネージャーって大変だよなー」
隣にいたやつが、三人を見ながら呟いた。
「分かる。俺らが休んでる間もずっと動いてるし」
「練習始まる前からいるじゃん」
「終わったあとも片付けしてるしな」
毎日見てるから当たり前になってるけど、水乃たちは俺らが来る前から準備して、練習中もずっと動いて、終わったら片付けまでしてる。
「俺、ああいう彼女ほしいわー」
誰かが言った。
「分かる!」
「部活終わるの待っててくれてさー」
「飲み物とか渡してくれんの?」
「最高じゃん」
「いや、それマネージャーの仕事だろ」
真澄が呆れたように言う。
「分かってるって! 例えばの話!」
「俺は優希ちゃんみたいな子がいい」
「なんで?」
「しっかりしてるじゃん。勉強もできるし」
「でも怒ったら怖そう」
「…………」
真澄が黙った。
「何でお前が黙るんだよ」
「いや、別に」
思わず笑いそうになる。
たぶんこいつだけは知ってる。
あいつが怒った時、本当に怖いことを。
「俺は水乃ちゃんかなー」
「…………」
今度は俺が黙る。
「分かる。可愛いよな」
「なんか優しそう」
「ちょっと天然っぽいし」
「俺、ああいうふわっとした子好き」
「…………」
うるせぇ。
「でも藍川先輩もいいよな」
「あー、分かる! めっちゃ美人」
「しかも優しいし」
「一個上ってのもいい」
「俺、藍川先輩みたいな彼女ほしいわ」
「お前には無理だろ」
「なんでだよ!」
「てか三人とも全然タイプ違うよな」
「分かる。うちのマネージャー普通にレベル高くね?」
「彼女いない俺らからしたら羨ましすぎる」
「誰か俺の彼女になってくんねぇかなー」
「まず相手探せよ」
「そこから!?」
くだらない話で笑い声が上がる。
「でもさ、実際彼女いたら何すんの?」
「何って、普通にデートとかじゃね?」
「それが分かんねぇんだって。どこ行けばいいんだよ」
「お前、彼女できる前から悩んでんの?」
「できてから困らないように今から考えてんだよ!」
「順番おかしいだろ」
また笑い声が上がる。
「俺、この前彼女と映画行った」
「いいじゃん!」
「そのあと飯食って、服見たりして。あとゲーセン」
「めっちゃデートじゃん」
「だからデートだって」
「俺んとこは電話の方が多いかな。夜とか」
「毎日?」
「ほぼ」
「マジかよ。何そんな話すことあんの?」
「学校のこととか、今日あったこととか。次どこ行くとか」
「いいなー。俺も彼女と夜電話してぇ」
「まず彼女作れ」
「だからそれ言うなって!」
映画。
買い物。
飯。
電話。
次の休みの約束。
みんなの話を聞いているうちに、自然と水乃のことが頭に浮かんだ。
俺と水乃は、朝一緒に学校へ行って、帰りも一緒。
家が隣だから、お互いの家に行くのも珍しくない。
二人で飯を食ったことも、買い物に行ったことも、どっか遊びに行ったことだって何度もある。
でも、それは全部付き合う前から普通にやってきたことで。
彼氏と彼女になったからって、何かが大きく変わったわけじゃない。
「…………」
そういや俺。
水乃と付き合ってから、ちゃんとデートしたことねぇな。
花火だって二人じゃなかったし、それ以外は学校と部活と家。
近すぎるから、わざわざどこかへ誘うなんて考えたこともなかった。
「早手は?」
「……は?」
急に名前を呼ばれて顔を上げる。
「彼女できたら何したい?」
「…………」
できたら、じゃなくて。
もういる。
言えるわけねぇけど。
「知らねぇ」
「つまんな!」
「じゃあ好きな子とどこ行きたい?」
「どこでもいい」
「一番困る答えじゃん!」
笑われても、別にどうでもいい。
映画でも、買い物でも、飯でも。
水乃と二人なら、たぶん何でもいい。
そんなことを考えながら何気なく視線を上げると、その先ではちょうど水乃が優希と一緒に準備を終えたところだった。
しゃがんでいた水乃が立ち上がり、髪を耳にかけながらこっちを向く。
偶然、目が合った。
水乃が不思議そうに、こてんと首を傾げる。
――キュン。
「…………」
一瞬、胸が鳴った。
別に何かされたわけじゃない。
ただ目が合って、首を傾げただけなのに、そんなふとした仕草ひとつで未だに簡単に胸が高鳴ってしまう。
付き合う前から何度も見てきたはずなのに。
彼女になってからの方が、こういう何でもない瞬間まで可愛く見えるから困る。
「……何だよ」
聞こえるはずもないのに、小さく呟く。
水乃はますます不思議そうな顔をしたあと、優希に呼ばれて向こうを向いた。
――デート、か。
今までみたいに何となく一緒に出かけるんじゃなくて、俺から誘って、ちゃんと水乃と二人で出かける。
そう考えると、明日の予定が急に気になり始めた。
その日の放課後。
いつも通り練習をこなして、休憩に入った俺たちはコートの端に座り込んでいた。
タオルで汗を拭きながら水を飲む。
ふと視線を向けると、コートの向こうではマネージャーの三人が忙しそうに動き回っていた。
優希がノートを確認して、その横で水乃がボトルを並べてる。
藍川先輩は顧問と何か話したあと、すぐに二人のところへ戻っていった。
「マネージャーって大変だよなー」
隣にいたやつが、三人を見ながら呟いた。
「分かる。俺らが休んでる間もずっと動いてるし」
「練習始まる前からいるじゃん」
「終わったあとも片付けしてるしな」
毎日見てるから当たり前になってるけど、水乃たちは俺らが来る前から準備して、練習中もずっと動いて、終わったら片付けまでしてる。
「俺、ああいう彼女ほしいわー」
誰かが言った。
「分かる!」
「部活終わるの待っててくれてさー」
「飲み物とか渡してくれんの?」
「最高じゃん」
「いや、それマネージャーの仕事だろ」
真澄が呆れたように言う。
「分かってるって! 例えばの話!」
「俺は優希ちゃんみたいな子がいい」
「なんで?」
「しっかりしてるじゃん。勉強もできるし」
「でも怒ったら怖そう」
「…………」
真澄が黙った。
「何でお前が黙るんだよ」
「いや、別に」
思わず笑いそうになる。
たぶんこいつだけは知ってる。
あいつが怒った時、本当に怖いことを。
「俺は水乃ちゃんかなー」
「…………」
今度は俺が黙る。
「分かる。可愛いよな」
「なんか優しそう」
「ちょっと天然っぽいし」
「俺、ああいうふわっとした子好き」
「…………」
うるせぇ。
「でも藍川先輩もいいよな」
「あー、分かる! めっちゃ美人」
「しかも優しいし」
「一個上ってのもいい」
「俺、藍川先輩みたいな彼女ほしいわ」
「お前には無理だろ」
「なんでだよ!」
「てか三人とも全然タイプ違うよな」
「分かる。うちのマネージャー普通にレベル高くね?」
「彼女いない俺らからしたら羨ましすぎる」
「誰か俺の彼女になってくんねぇかなー」
「まず相手探せよ」
「そこから!?」
くだらない話で笑い声が上がる。
「でもさ、実際彼女いたら何すんの?」
「何って、普通にデートとかじゃね?」
「それが分かんねぇんだって。どこ行けばいいんだよ」
「お前、彼女できる前から悩んでんの?」
「できてから困らないように今から考えてんだよ!」
「順番おかしいだろ」
また笑い声が上がる。
「俺、この前彼女と映画行った」
「いいじゃん!」
「そのあと飯食って、服見たりして。あとゲーセン」
「めっちゃデートじゃん」
「だからデートだって」
「俺んとこは電話の方が多いかな。夜とか」
「毎日?」
「ほぼ」
「マジかよ。何そんな話すことあんの?」
「学校のこととか、今日あったこととか。次どこ行くとか」
「いいなー。俺も彼女と夜電話してぇ」
「まず彼女作れ」
「だからそれ言うなって!」
映画。
買い物。
飯。
電話。
次の休みの約束。
みんなの話を聞いているうちに、自然と水乃のことが頭に浮かんだ。
俺と水乃は、朝一緒に学校へ行って、帰りも一緒。
家が隣だから、お互いの家に行くのも珍しくない。
二人で飯を食ったことも、買い物に行ったことも、どっか遊びに行ったことだって何度もある。
でも、それは全部付き合う前から普通にやってきたことで。
彼氏と彼女になったからって、何かが大きく変わったわけじゃない。
「…………」
そういや俺。
水乃と付き合ってから、ちゃんとデートしたことねぇな。
花火だって二人じゃなかったし、それ以外は学校と部活と家。
近すぎるから、わざわざどこかへ誘うなんて考えたこともなかった。
「早手は?」
「……は?」
急に名前を呼ばれて顔を上げる。
「彼女できたら何したい?」
「…………」
できたら、じゃなくて。
もういる。
言えるわけねぇけど。
「知らねぇ」
「つまんな!」
「じゃあ好きな子とどこ行きたい?」
「どこでもいい」
「一番困る答えじゃん!」
笑われても、別にどうでもいい。
映画でも、買い物でも、飯でも。
水乃と二人なら、たぶん何でもいい。
そんなことを考えながら何気なく視線を上げると、その先ではちょうど水乃が優希と一緒に準備を終えたところだった。
しゃがんでいた水乃が立ち上がり、髪を耳にかけながらこっちを向く。
偶然、目が合った。
水乃が不思議そうに、こてんと首を傾げる。
――キュン。
「…………」
一瞬、胸が鳴った。
別に何かされたわけじゃない。
ただ目が合って、首を傾げただけなのに、そんなふとした仕草ひとつで未だに簡単に胸が高鳴ってしまう。
付き合う前から何度も見てきたはずなのに。
彼女になってからの方が、こういう何でもない瞬間まで可愛く見えるから困る。
「……何だよ」
聞こえるはずもないのに、小さく呟く。
水乃はますます不思議そうな顔をしたあと、優希に呼ばれて向こうを向いた。
――デート、か。
今までみたいに何となく一緒に出かけるんじゃなくて、俺から誘って、ちゃんと水乃と二人で出かける。
そう考えると、明日の予定が急に気になり始めた。