あきらめられない夢に

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今、僕の目の前には舞台がある。

そこで松坂○○○劇団の公演が行われていて、僕たちはそれを見ている。

演劇のことはまるで分からず、今までこうした劇団の舞台を見たことが一度もない。

それでもこの劇団のレベルが低いものではなく、高いということくらいは十分にこの舞台とそれまでの稽古を見てきて分かっているつもりだ。

登場してくる役者たちは誰もが真剣で、与えられた役になりきっている。

素晴らしい演技をする役者たちに、この舞台が終われば間違いなく僕は惜しみない拍手を送るであろう。



しかし、主演女優が舞台に上がった瞬間。



一瞬にして空気が変わり、それまでの素晴らしい演技を見せていた役者たちでさえ霞んでしまう。



彼女は舞台に舞い降り、そして観客を魅了する。



他の役者が素晴らしい演技をするのに対し、彼女は違っていた。

それは演技ではなく、その役の人物が乗り移っているようだった。

彼女のことを全く知らない人が見れば、日常のことなどもはや想像もつかないだろう。

それくらいこの演技は凄いものであり、この劇団のなかでもかなり際立つものであった。
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