あきらめられない夢に

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今日も○○○劇団の稽古は続いている。



その稽古は次の最終公演のものであり、それは僕の執筆した作品である『あきらめられない夢に』だった。

団長さんに台本ができあがって見せてもらったとき、僕の作品観が失われていないことに驚いた。

それでいて団長さんの世界観が違和感なく混じり合い、舞台用に書かれていることにより一層驚いた。

さすがはこれまで何十年間もこの劇団の台本を書き続けてきたことはある。

それだけに、やはり最終公演の作品も自身で書きたかったのではないかと思うが・・・



こうして稽古を眺めていると、自分の作品が文字ではなく人によって表現されていることが凄く不思議な気分であり、新鮮な気分だった。

自分の頭の中にしか存在しなかった人物たちが形となって感情を持って目の前に広がっていくということは、作者としては嬉しさで一杯だった。



次の瞬間。



その嬉しささえも忘れてしまい、思わず見とれてしまった。



まだ稽古を始めて二回目。

役が決まって間もなく、誰もが台詞がたどたどしい。

それなのに一人だけ、既にその役の人物になってしまっている。

僕はその演技に胸が熱くなった。



そして、団長さんが最終公演の作品をつぐみさんに譲った理由が、ほんの一部だけかもしれないが分かったような気がした。
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