あきらめられない夢に

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「ちゃんと私のレース見てくれた?」


つぐみさんと上越のレースを見に行ってから五日が経ち、レースが終わったという次の日に上越から電話が掛かってきた。

彼女の成績は予選を六位で通過し、優勝戦は三着という成績だったらしい(全て彼女からの言葉そのままである)。


「絶対に二人が来ていると信じて、私、あのレースはメイチのスタートいったんだから」


興奮冷めやらぬとは、まさに今の上越の状態のことをいうのだろう。

この電話の序盤には「レースの次の日は体がだるくて、元気が出ない」と確かに言ったはずだが、十分に元気が有り余っているように思える。

しかし、この状態の彼女にそのことを口にしてしまったら火に油を注ぐことと同じように興奮が増してしまい、恐らく収拾がつかなくなってしまうだろう。


「本当に凄かったよ。

ところで『メイチ』って何?」


ここは冷静に彼女を労いながら、少しずつ興奮を冷ましていくことが今の僕にできる一番の最善の策だと判断した。


「ええっね、目一杯とか精一杯とか、そういう意味」


質問が効いたのか、先ほどよりもずっと大人しく彼女は答えた。

あのままの状態で電話を続けられたら、逆に僕のほうが疲れてしまいそうだった。


「でも、つぐみさんが私のレースを見せに行くからと言って、宮ノ沢くんの連絡先を教えてくれって聞いてきたのには少し驚いたな」


「えっ」


その言葉に耳を疑った。



仕事を辞めて地元に帰ってきた僕が落ち込んでいて、それを励ますためにつぐみさんに上越が声を掛けたと思っていた。



いや、あの日確かにつぐみさん自身も僕の質問に対して否定をしなかった。



それじゃ、彼女はあのとき嘘をついたということなのか。

一体、どうして、何のために・・・
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