あきらめられない夢に

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その日の夜、地元に帰ってきてから初めてチェーンメール以外で携帯電話の着信音が鳴り響いた。

決意のようなものをした日から三日、ずっと電話をしても電源が入っていなかった相手だった。


「あっ、もしもし。

ごめんね、仕事で携帯電話から離れていてさ」


その声はほんの少しだけ申し訳なさを感じる程度で、以前に会った時と同じで無邪気な声だった。


「自分から俺の携帯に番号入れといて三日も電源切っているって、どういう仕事しているんだよ、上越」


それでも、その無邪気な声が一週間前に出会ったときの気まずさなどを一蹴してくれたことを僕は感じた。

高校時代から何一つ変わっていない、そのことが今の僕には羨ましく思える。


「まあ、いいや。

実は職業安定所の場所を教えてほしかっただけだから、もう自分で調べたから別にいいよ」


「職業安定所?」


思わず口にしてしまい、後から後悔と焦りが出てくる。

もともと彼女に場所を聞くつもりではいたが、それでも今は自分から口にしてしまったこと自分の愚かさを恨むような感情がひしひしと広がっていく。


「ああ、そうだよ」


後悔している自分でも、焦っている自分でも、恨んでいる自分でもない。

口調を強めて少しでも強がり見せようとしている、そんな自分が今は一番嫌だった。


「今、戸田だから今日中にはそっちに帰るし、明日だったら一緒に行くよ」


「戸田って埼玉かよ。出張か何か?」


「いや、いつもこんな感じだけど」


僕が頭の中を整理して出した質問を間髪入れずに答えられてしまい、思わず言葉に詰まってしまう。

いつも通りということらしいが、そんなに移動が多い仕事をしているのだろうか。
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