あきらめられない夢に
下を向こうとしたとき、またしても彼女は僕の両手を包み込んできた。

視線を上に戻すと、彼女は涙目になりながら僕をじっと見つめていた。


「逃げ道でもいい。

例え逃げ道でもその道を一生懸命進んでいけば、いつかきっとそれが立派な道になるから。

だから・・・」


きっと、この言葉は彼女自身にも言い聞かせているのだろう。



このような状態で僕がそう思うことは、不謹慎なのかもしれない。



日本中の人を笑顔にする夢を諦めて大阪から帰ってきた彼女は、紆余曲折を経て今に至っている。

夢は劇団を見に来てくれた人たちを笑顔にすることに変わったが、彼女はそのことに対して一生懸命進んでいるのだ。



だからこそ、今の言葉が出てきたのだろう。



そして



だからこそ、その言葉は僕の胸に響き、背中を力強く押してくれた。


「だから・・・」


「ありがとうございます」


今度は僕が彼女の両手を包み込み、視線を逸らさずに見つめた。



包み込んだ両手をゆっくりとテーブルの上に置き、小さく息を吐いた。


「本当にありがとうございます。

俺、明日から頑張ります」


そう言うと彼女は涙目ながらも、満面の笑みで「うん」と力強く答えてくれた。


「頑張って。

あっ、料理が冷めちゃうから、早く食べましょ」


「はい」
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