金魚すくい
店員は注文を取りに、ハンディを持ったまま固まっている。
スラッとした背に短く切りそろえた黒い髪、二重の瞳が私を捉え、大きく見開かれている。
その容姿には見覚えがあった……。
知っているものとは少し違っているけれど、それを見間違えるほど、自分の目は腐っていないはずだ。
ーーけど……。
……まさかそんな。
そんなこと、あるわけない。
だってーー。
「…………優」
バサバサ……。
手に持っていたメニューが床に落ちた。
私と優の間で視線を行き来させていた勉さん。
「もしかして……彼氏?」
顔を覗き込み、声の音量を落としてそう聞いた。
だが静かな店内ではそんな声もよく通る。
「いえ……違います」
「そう?」
まだ不思議そうな顔を向ける勉さん。
私は落としたメニューを拾おうと手を伸ばすと、
「お客様、お取り致します」
そう言ってメニューを拾い上げ、差し出した。