キミ想い


「いいかどうかは別として、とりあえず寒い」


隣り合って木製のベンチに腰掛ける佐伯が肩をすぼめる。

雨の日特有の湿気のせいか、いつもはワックスでフワッとしている佐伯の髪には若干元気がない。

水に濡れてしまった動物みたいで、ちょっとだけ笑える。


……ううん。

笑って忘れたくて、無理に口角を上げた。


「なんなら私のブレザーかしましょうか?」

「そんなことしたら片桐が風邪ひくだろ」

「佐伯こそ風邪ひかないうちに戻った方がいいよ」


そもそも、一人でサボるつもりだった。

でも、教室を出ようとしたところで、佐伯に呼び止められ……


こうして、二人でサボることになったのだ。

多分、いつものように気遣い、一緒に過ごしてくれているんだろう。


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