*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
迷いを感じさせない露草の言葉に、汀吐息を漏らして顔を俯けた。





しばらくそうしていたが、とうとう、諦めたように視線を上げる。







「ーーーーーそう、ね。



私は、たしかに………入内が嬉しいか嬉しくないか、と訊かれれば。




…………嬉しくないと答えるわ」







「ーーーやはり………」







露草は、眉を曇らせる。






「………あのね、わかってはいるのよ。



春宮さまの女御として所望されるのは、身に余る光栄だってこと。




でも………どうしても、釈然としないの。



よく知りもしない御方の妻になって、そうしてそのまま、一生を終えるのかと思うとーーー」






汀はそこで言葉を切って、溜め息をついた。







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