華の欠片
両者一歩も譲らず、先手を入れる気配が

ない。





凄まじい集中力だ。






熱気漂う道場で睨み合う二人の額には汗

が滲んできた。





先に仕掛けたのは沖田だった。

椿は沖田の振り上げた竹刀を軽々とか

わして行く。





「避けてばっかりじゃ、僕には勝てない

ですよ?」






沖田は余裕そうな笑みで椿をみる。




「.......遅い。」




「....え?」




その時だった。





沖田が次の攻撃を仕掛けるその時、椿

の体制がぐっと低くなる。





そして椿が右に足を踏み出した瞬間沖田

の視界から椿が消えた。






あまりの出来事に沖田は顔を歪める。





一瞬の事だった。





椿は沖田の背後に入り首筋に自分の竹刀

を当てた。





「.....一本。勝者、里原....」






突然の事に沖田はもちろん、周りの傍観

者でさえ茫然と立ち尽くす。






誰もが予想打にしなかった結果に驚きを

隠せないでいる。



それだけではない。

あの沖田の鋭い突きを軽々と避ける人な

どここにいる誰も見たことがなかったか

らだ。



この日……


......浪士組で一・二番目を争う天才剣士

、沖田総司が突然入隊した新入りに負け

た。







その沈黙を破ったのはやはり沖田だった













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