華の欠片




稽古が終わり私と藤堂は道場を出た。

蒸し暑い道場から解放された私達の喉は

もうすでにカラカラであり、限界に達し

ていたので二人で井戸へ向かう事にした。


「藤堂、そういえば斎藤に芹沢さんには

無礼の無いようにと釘を刺されたんだが

が、」


「嗚呼、芹沢さんね。

芹沢さんはここのもう一人の局長で、い

つも鉄扇子を持っているかな。

怒らせると最悪斬られるから挑発するよ

うな事はすんなよ。」



前方の右側に鉄扇子をもった大柄な男の

人が目についた。



「鉄扇子って.....あの人か?」


私はその人を指刺して藤堂に問う。


「ちょっ..!!

椿っ…指刺すなよぉ!

下ろしてっ..!!」


藤堂は私に小声で怒り、

そして、私の手を掴むと無理やり下した。


「......すまん」



すると前方にいる芹沢さんと、隣にいる

狐みたいに目の釣りあがった男が近付い

てくる。




私の隣の藤堂は顔を青くして小刻みに震

えているようだった。

....しつこいけど、やっぱり犬みたい。


「おぃお前、新しく入ったとかいう隊士

だな。近藤から話は聞いておる。

さっき儂を指差して何をしていた。」


芹沢さんの表情は少し恐ろしかったが、

この上から目線というか、見下してる雰

囲気がうざいと思った。正直。


「申し訳ございません。

軽率な行いだったと反省しております。

お恥ずかしながら、新米な者でして芹沢

先生のお顔を存じ上げて居なかった私に

先程、藤堂さんが教えて下さったのです



あまりにも芹沢先生が偉大なお方でした

ので無意識に手が出てしまいました。」


私は頭に出てくる機嫌取りと言い訳の言

葉をすらすらと並べ芹沢先生をみた。






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