桜の雨が降るとき

第二話   芽衣

「この教室いい感じだよねー」


「ねー。やっぱ旧校舎さけあって静かだよねー」


「受験生のための措置らしいよ」


「……うちらも受験生か……」


「高校行けるかなあ」


「翠なら行けるでしょ」


「てか芽衣どこ行くの?」


「やー、そこは秘密って事で……」



体育館での始業式、担任発表の後、私と翠はすぅと別れて新しい教室に向かった。


我が浜浦中学校は田舎なだけあって今どき旧校舎と言うものが存在する。


3年生の教室はその旧校舎にある。
なぜわざわざ最高学年が門や校庭から遠い旧校舎なのかと言うと、受験生に静かな環境で勉強して欲しいから……だそうだ。


それと、3組の教室からは浜浦の街と遠くの海が見えると言う贅沢なおまけがついていた。


担任は去年に引き続き竹内先生になった。
私は純粋に嬉しかった。


これから各クラスで初学活が行われるらしいのだが、まだ竹内先生が来ない。
ということで、今はみんな自由な席でおしゃべりタイムとなっている。


私は翠と教室の壁際最前列、つまりはじっこを陣取っていた。


日野翠はいわゆる学級委員などをやるような子だ。
運動神経もよく、足も速い。
また、ピアノを弾いたり指揮者をしたりと色々と多才な子だ。
吹奏楽部の部長もつとめている。


そんな翠との会話は、いつもすぅとかとの会話よりも内容が高密度なのである。



「そういう翠はどこー?」
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