サヨナラのしずく
エレベーターで最上階まで行き、特別室のドアをノックする。




そしてゆっくりと扉を開けた。




今日もベッドからうめき声が聞こえる。



あたしは側までいき、手を伸ばし引き戻した。




ここに通うようになって一月、あたしは未だに手を伸ばして触れることができない。



なのにこうやって毎日来るのは死んでほしくないからだ。





3ヶ月前…。



知らない男の人からいきなり電話がかかってきた。




その人はいつか小笠原ゆきと婚約したと報道されていた人だった。



その人の話は、小笠原ゆきが癌で長く生きられないという内容だった。





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