糖度∞%の愛【改訂版】

それを見ていた周りから、「喧嘩したのか?」「とうとう破局か?」なんて、囁かれているけど、そんなことどうでもいい。そんなことじゃ、私は傷ついたりなんてしない。

私を本当の意味で傷つけられるのは、彼方だけだ。
他の人の言葉なんかで傷つくほど、軟じゃない。

彼方の一挙一動で、私は面白いくらいに感情が浮き沈みする。
彼方が他の女の子と仲良くしているだけで傷つくし。腕を組んでいたら、苦しいくらいに胸が痛くなる。

そんな苦しみをくれるのも彼方なら、今まで感じたことのない幸せをくれるのも彼方だ。
だからこそ彼方は私にとって、とても大切な人だった。
私の大半を占めていると言っても過言じゃないくらいに、彼方でいっぱいだった。
それなのに、彼方が私のことを同じように思ってくれていると、思えない。
……信じられないのだ。


「沙織さんっ!」


ここは会社だ。
彼方がそうやって、敬称を付けて呼ぶのは仕方ないってわかってる。でもこんな時でさえ、冷静さを失わない彼方。こんなときくらい、呼び捨てで呼ぶくらい焦ってくれればいいのに。そんな片鱗すら見せない彼方と、一緒にいたくなかった。

いつの間にか真帆を追い越していた私は、そのまま振り返らずに食堂を後にした。


―― あなたを信じられない私が悪いの?
   大好きなのに。……大好きだから
   怖くて仕方がないの。 ――


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