糖度∞%の愛【改訂版】

あの昼休みのことがあってから三日目の今日まで、私は徹底的に彼方を避けていた。
メールや着信も拒否まではさすがにしていないけど、完全にシカトしている状態だ。

そのことを真帆は言っているに違いない。


「あっちの言い分も、ちゃんと聞いてあげなって言いたいところだけど。 未だにあのお昼の腕組みが続いてるから、そうも言えないしねぇ」


それには答えずにただお茶を飲む。真帆がお茶をおセレクトしてくれたのも、私の身体のことを真帆がちゃんと知っているからだ。私は仕事中基本的にお茶か水しか飲まない。
じゃないとちゃんと血糖コントロールができないからだ。

今は炭水化物の入っていない、ゼロフリー飲料水も出ている。一般的には、人工甘味料じゃ血糖は上がらないと言われているけれど。私はなぜか人工甘味料を摂取すると血糖が上がってしまうのだ。
きっと私は、人工甘味料と相性が悪いのだろう。だから私は血糖が上がるリスクを避けるために、飲まないようにしている。
血糖が上がってしまうものを口に入れるときは、必ず注射を打たなきゃいけないから。飲み物を飲むたびに注射するのもいやだし、なるべくなら、知られるような行動を社内では取りたくない。
だから真帆や彼方が差し入れてくれるのは、水やお茶ばかりなのだ。


「それにしても、分からないね。 アイツ」

「うん、分からない」


しみじみとした真帆の言葉に相槌を打って溜息。

本当に分からない。
彼方の態度は、私に愛情がなくなったそれとは考えられない。
でも行動が伴っていないのだ。私が無視をしようと、あの可愛い子と腕を組み続けているのだから。
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