糖度∞%の愛【改訂版】

数回の呼び出し音が途切れて、また何か言われるのかと身構えた。けれど、意に反して今度はひたすら無言だった。


「……もしもし」


無言に耐え切れなくて、そう言葉を切りだす。けれど、電話の向こうからは返答がない。


「もしもし、五月女です」
『どこの馬鹿ですか?』


おずおずと名乗れば、無言が嘘のように素早く切り返された。その辛辣な言葉に、一瞬言葉を失ってしまう。けれど、ここで負けてる場合じゃない。
藤城さんがここまでキツく当たってくるということは、沙織がそれほどまでに傷ついている何よりの証拠だと思えたから。


「沙織さんの居場所、教えてください」
『断る』


考えることもせずに即答。

きっと俺がこうやって聞いてくることすら、藤城さんには予想できていたのだろう。俺だって、藤城さんが簡単に教えてくれないことくらい予想していた。そして、それを聞き出すことが簡単ではないことも。


「藤城さんが考えているようなことは、絶対ありません。 むしろ今さっき完璧に終わらせてきたんです」
『それは聞きようによっちゃ、“今さっきまで関係がありました”って言ってるようにしか聞こえないんだけど』
「関係があったと言っても、そういう意味じゃありません。 詳しくは沙織さんに直接言いたいんで、藤城さんには言えません。でも俺は、潔白です」


なんとなく、藤城さんと沙織が一緒にいるのだと分かっている。

でも、その二人がどこにいるのかが分からない。もしかしたら藤城さんの家にいるのかもしれないけれど、彼女の家は知らない。知らないのに、歩みを止めることは出来なくて、ただひたすらに足を動かし続けた。
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