神様の願いごと

ひとりで雨を見上げながらアイスを食べていた。

そう言えば、この雨、はじめてこの神社に来たときの様子に似ている。

まだ梅雨に入ったばかりのあの日も、突然のどしゃぶりになって、わたしはびしょびしょに濡れながらこの神社に逃げ込んだ。

そうして見つかったんだ。少しおかしな神様に。


「いいものを食べているな千世」

「うわぉっ!!」


気づくと隣に常葉がいた。わたしになんの確認もなく、さっそくビニールの袋の中を漁っている。


「ちょっと、気配消して近づかないでよ、びっくりするから」

「油断している千世が悪い。お、あずきじゃないか!」


アイスを見つけた常葉は予想通り喜んだ顔。最近は棒のささったアイスも食べ慣れてきたようで、シャクシャクとおいしそうにかじりはじめた。

あたりはすっかり雨の匂い。当然人は誰もいない。


「残念だ、今日はあたりじゃなかった。何も書いていない。つまらん」

「このアイスには元々くじ付いてないよ」

「そうなのか。けちだな」

「そんなこと言ったらメーカーさん怒ってもう売ってくれないかもしれないよ」

「誇り高いのだな。自らを安売りしないとは。すばらしい」


常葉が食べ終わった頃には、水はけの悪い神社の敷地はまるで海みたいになっていた。

まだ太陽はほぼ真上にいるはずなのに、空は分厚い雲のせいでどんよりと暗く重たい雰囲気。

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